生きるための願いがこもった魂の造形!!感性による創作の原点「アフリカンアートミュージアム」
山梨県北杜市は、大自然や水の美味しさ以外にも素晴らしき文化がたくさん存在する。
その中の一つがアートだ。
以前ご紹介した「中村キース・ヘリング美術館」含め、30近いアートを体感できる美術館を含めたミュージアムが存在する。
本日のご紹介は、山梨県北杜市長坂町「アフリカンアートミュージアム」
紀元前から近代までの世界有数のアフリカ美術のコレクションを有する施設である。
アフリカンアートといえばあなたは何を思い浮かべるだろうか?
私の直感は「生」である。
我々が住んでいる日本とは全く違う文化の中で、戦争(内戦)、貧困、差別、奴隷等壮絶な歴史。
また、独特な伝統文化がある民族。
その全ての根源から私はアフリカから誕生するアートは力強い「生」を感じるのだ。
ピカソやブラック、マチスやモジリアーニなど、近代の美術家たちはアフリカやオセアニアなどの原始美術からイマジネーションし制作をしている。
想像を超える表現力や、パワー、造形は真っ直ぐに私の心に突き刺さる。
アフリカンアートから得る「生きる」イマジネーションの旅。
精神的な創作の原点を是非、ご覧いただきたい。
今回伺った際の展示テーマは、開館10周年記念「アフリカ美術の真髄Ⅱ」
2020年はアフリカンアートミュージアム開館10周年であったが、新型コロナウイルス感染症対策のため実現できなかった記念展を、今年規模を拡大し開催。
1年を通して3期に分けてアフリカ美術の名作を紹介する第2弾である。
今回の展示では前期にはノック、イフェやベニンなど紀元前から17世紀頃までの美術を、後期ではそれ以降のナイジェリアやカメルーンの美術が紹介されている。
その中でも特に気になったもの、興味深い作品を商品解説とともにピックアップしていくので、是非ご覧いただきたい。
ナイジェリア /人頭の頭上面 / エコイ
クロスリバー周辺の民族のマスクは、動物の皮を表面に張っていてリアリステイックである。
その中でもエコイのマスクはアフリカンアートの中でも異彩を放っている。昔、この地域では敵対する民族のチーフの首を取ったとき、その戦勝祝いにその首を頭に乗せて踊ったといわれている。
植民地時代にイギリス人がそれを禁止したため、その代わりとして、このようなリアルな頭上面が作られたという。
これはそれらの中でも最大級のもので、五方向に伸びた髪型がユニークで、表情には息遣いが感じられる。
ナイジェリア /頭上面 / エパ
「エパ」とは、ヨルバランド北東部のエキティやイボミナという地域一帯で崇拝される宗教と、その祭で行われる仮面ダンスのことである。
この祭はヨルバにとっては重要な儀礼であり、神々へのお祝いの祭である。
その中で特に重要なものが、複数のマスクによるダンスである。
上部と下部の二重構造を持つ「エパ」の頭上面は、ふだんは祠に安置され、供物を捧げられたりしているが、祭になると登場する。
若い男性がかぶり、その男性が結社内で、さらに高い地位に上がったことを祝
ってパフォーマンスを披露する。
また、身分の高い男性が亡くなったときの葬送儀礼にも登場し、結社の儀礼の一部として公衆の場に飾られたりもする。
神話の中の「鉄との戦いの神」である「オグン神」を称える儀礼に使われる地域もある。この「エパ」のマスクは、古い時代の制作で、人物のフォルムや表情など表現力が豊かで傑出した作品である。
カメルーン / 王のマスク
カメルーンのグラスランド地方の山間部にバムンは住んでいて、王国時代の首都フンバンには王宮がある。
バムンは戦士として有名であるが、それは20世紀初頭にドイツ人が植民地支配のために入ってきたときに勇敢に戦ったからといわれている。
当時のバムン王国のジョヤ王は威厳を持ってドイツ人に接見し、その後は交易でヨーロッパの文化を取り入れている。
王宮もヨーロッパ式に建て替え、自身や家族もヨーロッパ式の服装をしていて、その写真も残されている。
バムン王国では王宮付きの秘密結社が仮面舞踊を行っているが、それは、頭の上にマスクを乗せて、その下の顔や首まわりを、独特の藍の絞り染めの布で覆い隠しているため、大男が歩いているように見える。
このマスクは頬の肉が垂れていて太っている人を表しているが、これは富んだ者の象徴であり、王を象徴したマスクである。
バランスのとれた表情、艶のある黒いパティナ(質感)は魅力的であり、使
用された時代色もある。
頭の左右の丸い突起は帽子である。
ナイジェリア / 藍染め布
ナイジェリアのヨルバランドと呼ばれるイバダン、イロリン、オウォやオショボでは女性の衣類用に「アディレアレコ」と呼ばれる藍染めの布が作られた。
1920年以降、イギリスから輸入された化学染料で染めた派手な布に押されて廃れていたが、60年代から70年代にかけて石油の利益により金を得た他民族からの注文があり、再び生産が始まった。
しかし、間もなく民族紛争がはじまり廃れてしまったが、現在は再び復興しつつある。
その技術は、防染剤として、ラフンと呼ばれるキャッサバのでんぷんをペースト状にしたものに水と硫酸銅を混ぜ、大きな鳥の羽の先で、布地に模様を
描く。
布を折りたたんで広げると、布に20個や32個の四角い折線ができるが、その線に沿ってそれぞれの四角い空間を抽象的なデザインで埋めた。
デザインは鳥や太陽などの意味を持っているという。
それらは完成したときにデザインによって別々の名前が付けられた。「私は私自身を取り戻す」など、ことわざのような名前である。
完成後、職人は自分自身のマークを入れた。
カメルーン / エレファントマスクと貫頭衣
グラスランド地域に住むバミレケにとって、このマスクは、象の顔、鼻、耳を象徴した形であり、かつては象結社の礼服だった。
結社のメンバーは王族、神官や勇者で、王に対しても影響力を持っていた。
メンバーの葬儀や 2 年に 1 度行われる象結社の集会など、特別な行事で用いられた。
20世紀以前のマスクのデザインはあまりビーズが使われていないことと、左右の耳のデザインが違っているので、このマスクは 20 世紀に作られたということがわかる。
頭に鳥を乗せているのがかわいらしい。
また、刺繍が施された藍染めの衣装は「ドプ」と呼ばれている。形式は、ナイジェリアから伝わったと思われる。
カメルーンやナイジェリアの「ドプ」は、「ティビ」とも言われ東部ナ
イジェリア人、ティビの人々から付けられた名前である。
「ティビ」の一部は、バミレケの人々によって長い間作られた。
バミレケの「ドプ」に使われる基本的な布は、北部カメルーンのガロウア辺りから作られる綿で織られた。
このような布は、バミレケの村に文化の中心地であるバンジョウンから運ばれてくる。
バンジョウンでは、女性が入念に、頑丈なラフィアの糸で幾何学的なデザインの刺繍をする。
刺繍が施された布は北のガロウアへと持っていかれ、染め物をする罌で青に染め
られた。
伝統的に自然の藍が使われたが、今は合成染料が使われている。
染められた服は、バミレケの地域に運ばれ、そこで女性達がラフィアの刺繍を、尖ったナイフやカミソリの刃で取り外すと、藍の背景に対し白い模様が浮き出る。
バミレケの模様は民族のモチーフで、その布は家を装飾するのにも使われた。
モチーフは「ウカリ」(ナイジェリアのドプ)からも取り入れられた。
大きな布は重要で、主に儀式の背景の幕として使われた。
現実主義に頼らないアフリカの造形は、感性による創作の原点である。
私自身、自らのイマジネーションの修行に本当に素晴らしい時間であったと実感している。
デザインや形に縛られることなく、己の思いを表現。
圧巻の生きるための願いがこもった魂の造形を、心で感じてください。
アフリカンアートミュージアム
〒408-0036 山梨県北杜市長坂町中丸1712-7
TEL : 0551-45-8111
E-MAIL : africanartmuseum2010@gmail.com
開館時間 : 9:30 – 17:00 ※入館は午後4時30分まで※祭日を除く火曜・水曜休館 / 7月8月は無休/12月~3月は冬季休館
入館料 : 一般 ¥800- / 学生 ¥700- / 保護者同伴の小学生以下無料
URL : http://www.africanartmuseum.jp/index.html
Instagram : https://www.instagram.com/africanartmuseumjp/
Facebook : https://www.facebook.com/africanartmuseum
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